わぶろぐ。

ミュージカルとか舞台が好きです。普段はTwitterに生息中

全然心配ない笠松シンバのこと

王はお帰りになったー!!!

いつもの如く褒めることしかできないbotです。どうぞよろしくお願いいたします。

【 シンバ 笠松哲朗 】の字面が早速に尊い

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2023年8月4日、有明サバンナに新たな王様が誕生しました。というよりも、子供の時に王子であったお方が大きくなって帰ってきました。おかえりなさいー!シンバはいつかやりたいと公言していたのもあって感動もひとしお。ヤングシンバを経験した方がシンバを演じるのは四季の公演では海宝くんに続き2人目、四季の劇団員では1人目になります。その後すぐに同じくヤングシンバ経験者の大鹿礼生くんがシンバデビューしました。おめめめめめめ!

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笠松くんは非常にお芝居の構築が丁寧でご本人が表現したいゴールが明確にあり台本の読み取り方が面白いんです。と言ってもそのゴールは私が勝手に受け取ってるだけなのでご本人がやりたいこととまーーったく別の可能性もあるのですが、でも芝居が見えるのは客として腑に落ちるしモヤッよりもスカッとしたほうが確実に良いので何がやりたいのかが伝わってくることは相性が良いんだろうなと勝手に!勝手に!思っています。結局芝居には正解がないからもう相性の世界なんだろうなっていう自論です。

 

何度か拝見して、笠松くんのシンバは幼少期のトラウマが中心にありそこからどうもがき苦しんで抜け出すか…というのがよく伝わってきます。ティモンとプンバァから教えてもらう「世間を見捨てればいい」は自分が壊れてしまう前にその環境から逃げることであり「ハクナマタタ」は楽観的になるのではなく彼のトラウマにフタをする作業であることも感じました。身を守るためにあんな小さな少年がそうするしかなかったという出だしからシリアスすぎる。これは私が観ていたディズニーミュージカルですか…?

ティモンが流されて昔の自分に何が起きたか思い出した時に歌う終わりなき夜はあれはもうゲッセマネの園ですねぇぇ。天国にいるムファサに呼びかけてます。「求めるときは必ずいるとあなたはいつも誓ったのになぜ反応してくれない?」と呼びかけても呼びかけても返事がない。切ない…。後半の「そうだそうだ」の突き抜けるような歌声はラフィキが声を聞いたと思うのも納得するくらいにスコーーンと出ててほんと気持ちがいいです。

ナラと再会するシーンでは「ナラ!?」じゃなくて「ナラ!!!」って断言してるのも記憶喪失だった人がとあるキッカケで一気に記憶が蘇ったときみたいな感じ。幼い頃と同じように闘ってたら突然思い出したんだろうなと思えるような言い回し。ナラの顔を見て思い出したってのももちろんあるけど、闘うという行為によって思い出したように私は感じました。ここでも記憶がすっぽり抜けるくらいの強いショックを受けてるんだなと察してモンペオタクはぐずぐずに泣くのでありました。そして「ヌーの暴走」という当時の現場を思い出してしまう直接的なワードを聞いてしまい我を忘れるくらいに動揺します。ここの目の動きがいかにシンバにとってキツイことなのか…フラッシュバックしてる様子がハッキリと理解ができるので、本当に可哀想になってしまう。

愛を感じての「言いたいことがあるわかって欲しいんだこの気持ちを」はナラのことを好きという気持ちというよりも痛みを共有したいという気持ちのほうが強いかなと私には聞こえるんですよね。もちろんティモンとプンバァは仲の良い兄弟だけどずっと心の中に引っかかるものがあって。一人で生きていた青年がようやく自分のことをわかってくれる人に出会えたような瞬間なのかなと。きっとナラに惹かれたもの今までに感じたことがない「安心感」なんじゃないかな。

ただナラに王様になるべきと言われてあの現場を知っているのと知らないのとでは大違いなわけで。何があったのか?と聞かれても絶対に答えたくないシンバ。故郷に帰りたくてもあんな事故を起こしてしまった自分が帰れるわけがないと苦しんでいるときにラフィキが現れます。ここからのシーンがまぁーーーーーーー良い。

鬱陶しいヒヒにイライラしている中で「お前こそ何者なのか?」と痛いところをつかれて表情が一変して少しこのヒヒが話すことを聞いてやろうか?となる流れも細かいなと思うんですよね。もったいぶってなかなか話さないラフィキにまたイライラして「で、あんたはわかっているの!?」と少し怒りモードになるのも。

ラフィキに連れてかれた先で幻影だろうとなんだろうとムファサに会えて。ここで前半の「終わりなき夜」でどれだけシンバが会いたがっていたか私たちは知っているので、すぐに別れが来てしまう中で叫ぶ「行かないで1人にしないでお願い」は思い出すだけで泣けてきますね…。

でも一瞬でも会えたことによって故郷に帰ってもいいんだと背中を押してもらって。どんなに辛く悲しいことがあっても人生は続いていく。「でも」一生忘れることなんかできない瞬間が誰にでもある。だから過去と向き合い学び、周りの人に助けてもらうことを恐れないこと。あなたは決して一人ではない。っていうことをこのシーンからひしひしと感じてくるんですよ。小さな一歩かもしれないけれどシンバにとっては大きな一歩。

シンバとスカーの違いって悲しさや寂しさも含めた気持ちを共有できる大切な人がいるかどうかなんだよなぁ…というところにたどり着く。スカーは王様になっても周りを見る事ができずに失敗に終わっていく。最後も友達だと思っていたハイエナを裏切ってしまう。笠松くんのシンバはプライドロックに追い詰められるところはもう朦朧としてて今にも落とされそうなんだけど、スカーの告白を受けて火事場の馬鹿力で一気にひっくり返す感じなんですよね。「お前を救い出す親父はここにはいない」と言われたけれど、大切な人がいたからこそひっくり返せた。ただ、一幕でムファサとザズがスカーの事を「敷物にしたらいい」と笑う姿を見るとそもそもムファサも良いお兄ちゃんでもないんだよね。あぁなる前に誰かスカーに手を差し伸べてあげられていたら…とたらればを考えてしまうのは良い舞台を観ている証拠ですわ。

たくさん悩んで自分と向き合って故郷を帰る事を選択したシンバに向けてラフィキが言う「機は熟したり」に人って遠回りしても失敗して時間がかかっても良いんだと励まされた気持ちになって涙止まらなかったですね。

ライオンキングはおそらく一番回数多く観ている作品なのですがこうやってまた新しい視点を提示してくれるのは素晴らしい俳優さんにたまたま出会えたからこそだよなとご恩に感謝してモンペオタクは今日も劇場に向かうのでありました。